岩手県からUターン
鶴田 淑子さん

県外へ出てみたからこそわかった酒田の素晴らしさを日々感じています
たくさんの出会いと楽しく生きるための力を子どもたちに。
ちょっと変わった学び舎「コウル」代表・鶴田淑子さんに、酒田の魅力や子どもに関わるお仕事についてお話を伺いました。
酒田で育ち、大学進学を機に東京へ
私はもともとちょっと変わってる子で、通知表に「芸人になったほうが良い」とか書かれちゃうようなキャラ立ちしてる生徒でした(笑)。それが原因で友人関係のトラブルに巻き込まれることもあり、自我の芽生えの時期と重なって不登校を2度も経験しました。美術館に行ったり本を読むのは好きだったので、詩を書いたりモノ造りをしたり・・・自分を突き詰めて好きなものを取り込み始めたのが2度目の不登校となった時期でした。
その当時まだメジャーではなかったアロマテラピーに触れたのもこの時期ですね。高校時代は、苦手な数学を頑張りつつ、友達とあちこち探索をして地元の人と触れ合ったり、昔ながらの商店に立ち寄りローカルな美味しいものを食べ歩いたりしていました。ただ、もっと新鮮なものや新しいことに出会ってみたいという気持ちは心の中に持ち続けていました。英語も、直接外国の方と話すチャンスはなかなかなかったので、当時好きだった外国人タレントと「脳内英会話」をしていました。
やっぱり変わってますよね!!(笑)
高校卒業後は東京の大学に進学して、「脳内英会話」を活かして外国の方が集まる場所へ出かけたり友達に芋煮を振舞ったりして世界を広げていました。卒業後はご縁があって岩手県に就職しました。
東京での学生生活も岩手での生活も楽しく充実していましたが、酒田の素晴らしさは様々な場面で再確認していました。大学時代の夏休みに友達を連れて酒田を案内した時に、みんなが「山も海も川もあって、こんなに贅沢な場所はなかなかない!」「何を食べても美味しい!」と絶賛してくれたり、帰省すると知らないおばあさんが「おはよう」って声を掛けてくれて・・・当時、目まぐるしい都会の生活に疲れ果てていた私は、酒田の人の温かさに涙してしまったこともありました!(笑)
再び酒田へ
酒田を外から見ることでその魅力を一層感じ、地元に戻ろうかと思い始めたころ父が病気になり、Uターンする決意を固めました。興味があった美術や芸術関係の仕事のお手伝いをしたりもしましたが、子どもと関わること・教育に関することに携わってみたいという気持ちが昔からあったので、家庭教師の仕事に就きました。
とはいえ自分が本当にやりたいことが家庭教師なのかという迷いもあり、とりあえずのつもりで始めたんです。
でも・・・ハマりましたね~!!(笑)
自分が投げかけた言葉に反応して変化していく生徒の姿を間近に見ることに感動したんです。喜びや苦しみを一緒に共感する。すごく楽しいと感じました。
担当の生徒はまさに十人十色。ただ共通しているように感じたのは、様々なストレスを抱えていてとても疲れているということ。「これじゃあ勉強に集中できなくて当然だな」と思いました。ただ、家庭教師という立場では、やはり勉強を教えて、学力の向上を目指すことが求められます。自分のなかでそこにジレンマを感じ始めたんです。そんな時担当した一人の生徒との出会いが、独立へ私の背中を押すこととなりました。
ちょっと変わった学び舎「コウル」立ち上げへ
その生徒は不登校で、2~3時間ずっと泣いていて勉強どころではない状態が何日も続きました。目の前で泣いている子に何もして上げられない無力感。彼女はただそばにいてほしかったんだと思いますが、家庭教師として来ている自分の立場でのやるせなさ。もっと違うアプローチが必要なのは明確でした。
学力アップと子どもたちが抱える悩みの両方をサポート出来る場所が必要だ! そんな場所がないなら作るしかない!! と思い、自分でやってみることにしました。
そこからは様々な分野を猛勉強しました。ストレスケア、アロマテラピー、漢方や食育。。。
今もピンときたものは必ず勉強するようにしていますね。
カウンセリングをして心や体のケアをしてあげて元気になると、学校に通えるようになるし、勉強にも集中できるようになるんですよ、みんな。
「やる気がない」んじゃなくて、疲れきっていて勉強に向き合える状態じゃないだけなんです。ですので、子どもが元気になるまでは家族の方には「待ってあげてください」ってお伝えします。また、一見何の問題もなく成績が良い子でも、突如バランスを崩すケースもありました。
だからこそ、ここに通っている子どもたちとは「自分を大切にする」ということを一緒に考えています。自分自身の未来や他者との関わりについて深く考える思春期に、「心と体は繋がっている」「自分らしく生きる」という軸を持つことはとても大切だと思います。例えば自分の口に入れるものだったり口にする言葉だったり・・・普段何気なく選択しているものを変えてみたり、年の離れた他者と交わっていくことで、それまでとは異なる考え方や物事の捉え方が自然と生まれます。言葉にすると難しそうに聞こえますが決して難しく学ぶわけではなく、一緒に味噌作りをしてみんなで食べたり、近所のお団子屋さんの団子を食べながらそれを作っているおばあちゃんの手仕事について話したり・・・。こういう話をすると子どもたちって自分の目で見に行くんですよ。「先生!行ってきたよ!」って。こういう力って生きるうえで大切だと思うので、何か紹介する時には、「モノ」の後ろ側にいる「ヒト」についても必ずセットで話をするようにしています。
お団子にきな粉をまぶす手さばきは神業です!
手作り味噌と食を考える会
子どもたちに伝えたいこと
逆境に強くなる子にしてあげたいですね。人って、辛い時に「人に当たる」のか「周りと協力する」のか、その人の中心部分が見えてくると思うんです。そういう時に試されるというか。そんな時、他者に当たったり攻撃したりでは・・「信頼される人」にはなり得ないと思うんです。
そうならないためにも、楽しいことを見つけようというマインドや辛いときこそ気持ちを上げていける力を一緒に育てて行きたいです。勉強だって辛いときもあるけど、それをいかに楽しんで取り組めるかとか、すべて自分次第だと思うんですよ。
酒田の子どもたちって、強い吹雪とか寒さとかに耐えられる「我慢力」はすごいと思うんです。それはもう本当に偉い!! ただもう一歩、「楽しむ」ことにもっと貪欲になるべきだと思います。耐えてばかりでは辛いので、楽しいことを「自家発電」するスキルを身につけて欲しいですね。そのお手本になれるよう、まずは私が楽しんじゃってるんですけど(笑)。
今後は、生徒みんなで外へ向けての行動を起こしたいですね! 何かを企画して人を集めて楽しんでもらうとか・・・これからの時代って何が起こるかわからないので、どんな状況になったとしても生きていけるアイデアと実行力と逆境力、タイミングを掴む力がますます必要になると思います。それを体得するためにたくさん経験できる場を一緒に作っていきたいです。あとは、今までも開催してきましたが、様々なスキルをもった大人たちと触れ合って、実際に体験する機会をもっともっと増やしたいですね。色々な大人がいるんだな~、こんな生き方しても良いんだな~って感じてほしいです。未来を放射線状にイメージできるというか、可能性を広げてあげたいです。子どもたちの頭の中で広げるだけじゃなく、ちゃんと実際に体験させてあげたい。「やってみたい」という欲を満たしてあげたいですね。
体験×英語がテーマの
ちびっこイングリッシュ
気持ちのままに描く生徒
美容系への進学を考える生徒の実験台に
みんなの「楽しい」を共有・共感
時間があれば散歩によく行きます。近所をぶらぶらする時もあれば公園を歩くこともありますね。そこで見つけた「楽しい」や「美味しい」を子どもたちに話します。すると子どもたちもたくさん教えてくれるんですよ。あれが面白かったから見てみて! って。教えてもらったものは必ず行ったり見たりしますね。場所でも動画サイトでも。内容そのものも興味があるし、その子がどのポイントに反応したのかも気になるんです。
ここに来る生徒だけでなく大人も子どももそうだと思うんですが、思ったことや感じたこと、心の中を「アウトプット」したいんですよ。話を聞いて共感してほしいんですね。なのでたくさん話を聞きますし、こちらも話します。いわゆる「反抗期」と呼ばれる年代の男の子も親御さんとのことや日常のことなど、吐き出していきますしね(笑)
話したいことで溢れています
酒田へ移住を検討している方へメッセージ
酒田では人生を味わえる。生きてるって実感できます!!(笑)
四季がハッキリしているので、春を感じる喜びや冬の厳しさをかみ締めることができます。ご近所さんとの温かい関わりや、静かで少し寂しい夜。そんな感覚が味わえるって、実はなかなか贅沢なことだと思うし、どこでも感じられるわけではないと思うんです。
子育てする上でも、酒田は子供の五感を刺激して「感覚」を養える最高の場所だと思います。四季折々の花や木の香り、色の変化、鳥のさえずりや雪の感触。それはもう絶好の環境です。子どもたちと何か作品を作ろうってなれば、葉っぱや木の実など自然の材料がたくさん集まるし、徒歩や自転車でどこまでも冒険に出れる。都会に比べ、自分の時間をしっかりコントロールできるのも大切な要素です。実は意外と難しいですよね?
そしてなんと言っても、酒田の人は本当に優しいです。安心して暮らせる素晴らしい街ですよ!
生徒たちの笑顔は格別!
自分の心を見つめる時間も大切です
高校時代から変わらず
お散歩が大好き
◇ちょっと変わった学び舎コウル/http://koulu-sakata.com