東京都出身
長澤 理菜さん

子どもと関わる園の仕事もお寺の仕事も、まだまだ勉強中です!
「大切なのは、どこにいるかじゃなく何をするかだと思う」まっすぐな瞳でそう語った理菜さん。
幼稚園を営む由緒あるお寺に嫁ぎ、学ぶことばかりの日々。知らない土地に来たからこそ「自分らしさ」を大切に過ごすその姿からは、移住を考える上でのたくさんのヒントが見えてきます。
酒田に来たきっかけは「三男詐欺」?!
夫と出会ったのは、私が大学2年生の時でした。当初は「山形県酒田市の浄徳寺というお寺の出身」ということはわかっていましたが、夫は「三男だから・・・」と言っていたので、深く考えることもなくお付き合いをしていました。でも、付き合って1年ちょっとくらい経ったタイミングで、突然「お寺を継ぐから酒田に帰らなければならなくなった」って言われたんです。衝撃的過ぎてハッキリ覚えているんですが、10月にその話を聞かされて年明け1月には実家に戻ってしまったんですよ!! 後から詳しく聞いたら、お寺の大きな行事があったから急だったようですね。
そこから遠距離交際が始まり、初めて酒田に行きました。その時に連れて行ってもらったル・ポットフーのお料理が本当に美味しくて感動して、酒田の「食」の魅力にハマりました。ただ、酒田に来るまで幼稚園を運営してるなんて知らなくて、びっくりしました。そして何より驚いたのは、夫のご両親に初めてお会いした時に、「結納はいつにする?」って言われたことです。その時点で、まだ夫からプロポーズもされていなかったのに(笑)。そこからはトントン拍子で話が進み、大学卒業後、気づいたら酒田で結婚式を挙げてたって感じです。それまでずっと東京での生活を楽しんでいたし、夫も「三男」と言っていたので、ゆっくりと将来を考えようと思って付き合い始めたはずだったのに!!! 今では「『三男詐欺』っていう一種の結婚詐欺だったよね~!」って笑い話にしています(笑)。
お寺と園を行ったり来たり? 理菜さんの1日
あっという間に結婚の話が進みましたが、私が絶対に譲れなかった条件は「ペットを飼う」ことでした。小さい頃から犬や猫がずっと身近にいる生活を送っていたし、見知らぬ土地に来ることへの寂しさも大きかったので、これだけは譲れませんでした。お寺の本堂に繋がる住居は改装したばかりで新しく、お部屋もたくさんあったので、住まいに関しては迷わずご両親との同居を選択しました。全てのことにはメリットとデメリットがあると思うんですけど、私はメリットを最大限生かすことでデメリットをカバーしようって考える前向きな性格(笑)。同居できるスペースがあるのにアパートを借りるなんてもったいないって思ったし、一人暮らしの経験がなかったので、義母からお料理をたくさん教えてもらえました。
東京にいる時から運転していたので車に関しての不安はなく、生活面はスムーズにスタートしました。ただ、お仕事の面では「幼稚園」も「お寺」も未経験。通信制の大学で幼稚園教諭の免許取得に励みながら、御詠歌(※1)の研修会などにも参加しました。御詠歌の研修は各地で開催されるので、幼なかった長女を預けて京都まで出張したこともありました。今もまだまだ勉強中の身です!!
今は、朝起きてまずお寺の仕事をします。主に仏様にお供えするお膳の準備ですね。結婚当初は、一から教えてもらいながら苦労して作っていましたが、最近ではだいぶ慣れてきました。
その後は家族の朝食作りや子どもたちの身支度などの世話をする「母親業」に移ります。長女の出発時間に合せて、次女と犬の散歩に行きながらゴミ出しもしちゃおうとする効率重視タイプ(笑)。ゴミ袋を抱えて小さい娘と犬を連れて・・・って周りから見たらすごい光景かもしれませんね!! 犬の散歩から帰ると、夫と次女が一緒に家を出るので見送りをして、またお寺の仕事をします。その後は園に出勤しますが、急な仕事が入ればすぐお寺に戻ります。園で事務の仕事をしつつ、保育の人手が足りなければ保育に入り・・・「理菜先生って今どこにいる?」なんて探されちゃうこともしょっちゅうです(笑)。
※1 寺々を参拝する人が、そこの仏をたたえてうたう歌。
結婚の条件にするくらい大切な家族です
浄徳寺
保育の補助もします!
寝不足で記憶が飛んだ?!じょうとく保育園オープン
酒田を含め、地方都市って新しいことにチャレンジしやすいなぁって感じます。私が移住した頃はなかったネイルサロンや飲食店が次々とオープンしていって・・・やっぱり都会より家賃などの値段設定も安いので、チャレンジしやすいのかな。そのお店がずっと流行り続けるかはまた別の話なんでしょうけど・・・。
私にとっては「じょうとく保育園」のオープンがまさにチャレンジでした。夫から、建物の外装や内装、間取りから家具に至るまで新しい園のハード面は全て任されたんです。国が定める保育園の設置基準を満たしながら、限られた面積に必要な設備を入れて・・・もう頭をフル回転させないと考えられませんでした。さらに設計士さんから図面を見せられながらコンセントはどこに何個にしますか?って言われた時は、「え~!図面だけじゃわからない!」って困り果てましたね(笑)。各教室の家具や壁の色・素材など決めなければならないことが多く、カタログや資料とにらめっこして寝不足の日が続き・・・。ついに記憶が飛んだんですよ!! 娘たちをお迎えして車で帰宅中に、自分がどこにいるのかわからなくなったんです。キャパオーバーした瞬間でしたね(笑)。
責任重大で本当に大変な任務でしたが、完成したときの感動は想像以上でした。さらにそこで子どもたちが遊んでくれることで、鮮やかな色が足されていく感じがすごく嬉しかったです。浄徳幼稚園は先代からずっと続いてきた歴史ある幼稚園で、原点ともいえる大切な場所。一方保育園は夫と二人で一から考えて創り上げた場所です。まだ2年しか経っていないのでここからが本番。子どもたちや地域の方々から愛され信頼される園になるよう努めていきます!
じょうとく保育園
幼稚園にヘルプに入ります!
まだまだ勉強中 「お寺」の仕事
お寺の仕事は1月から毎月なにかしら行事があり、さらに突発的に仕事ができたりするので、1年がめまぐるしく過ぎていくように感じます。私が任されている仕事の中に「御詠歌講」があります。御詠歌は春と秋のお彼岸や御忌の法要の際にお唱えしているもので、御詠歌講は年に12回開催しているんですが、なにぶん私はまだまだ力不足なので、そのうちの6回は他のお寺の方に指導をお願いしています。御詠歌の指導者には級があり、検定試験には「お舞」の科目もあるため、講習などある時は県内・外へ出向き様々なことを必死で勉強する日々ですね。着物を着る機会も増えたので、試験科目にはありませんが着付けも学んでいます。年間12回全ての教室の指導ができるよう、そしてもっと御詠歌に親しんで一緒にお唱えしてくれるか方が増えるよう頑張りたいです!
行事で御詠歌をお唱えしている様子
歯の痛みを取り除いてくれる「ほっぺ地蔵」
子育ても昔からの友人も、大切にし続けたい
夫は園とお寺の仕事で日々忙しく、旅行を計画していても突然のご不幸があれば旅行をキャンセルしなければならないこともあるので、予定が立てにくいとは感じますね。でも、半日でも休みが取れれば家族4人で公園に行ってお昼を食べて・・・って、ゆったりとした休日を過ごしています。やっぱり自然がたくさんあるのは子どもにとって最高ですよね! 夫も私もキャンプなどの経験はないのですが、子どもの経験にもなるし今後やってみたいなって思っています。義両親から「私たちが元気なうちに色々な所に旅行しておきな~」って言ってもらったので、海外旅行も計画中です。
子どもとの日常はもちろん一番大切で、かけがえのない時間です。でも、昔からの友人との時間が、酒田に来たから無くなったっていう風には絶対したくないんです。「遠いから・・・」「子どもがいるから」って理由にすると、きっといつかその「遠さ」や「子育て」をストレスに感じて、生活に不満が生まれるような気がするんですよね。だから大切な友人との集まりがある際には、夫や義両親、子どもたちに「私、行ってくるので、よろしくね〜」って宣言して、それまでは全力でやることをやって、後ろめたさを持たず行くようにしています。これは、結婚して酒田で住むことを決めた時の、私の密かな決意でもあります。何かのせいにして自分の大切にしてきたものを犠牲にするのは、違うと思いますし、幸いにも、ずっと同居させてもらって家族6人と犬1匹での生活が根付いているので、母親が一晩いなくても子どもたちも全然へっちゃらです(笑)。昔から自分にとってのストレス要因は自分の行動で消していくっていうスタンスだったので、酒田に移住することが決まったことを報告したとき、「全然大丈夫でしょ!どこに行っても心配なくやっていけるよ!」って友人たちから言われたほどです(笑)。
ステージママもしてますよ!
友人たちと大阪で集合!
酒田に移住を考えている方へメッセージ
まずは・・・あまり構えず飛び込んでみて欲しいですね。住み慣れた土地から離れて新しい生活をスタートさせるということはパワーがいることだし、不便さやギャップを感じることは絶対にあると思うんです。でも、その時に自分がどう動くかで変わってくるというか・・・。関東や自分の地元と比較するんじゃなくて、今この環境の中で良いところを見つけていこう! って思考転換することが大切かな。
移住者として、その土地や人に敬意を持って学んでいく姿勢ももちろん大切ですけど、自分の心地良さは自分で作っていくんだっていう気持ちと、どこに住むとしても変わらず「譲れないもの」みたいなのは持っていたほうが移住生活はうまくいくと思います。
私にとっての譲れないものは「犬を飼う」ことと「実家に帰ったり友人に会う」ことなんですけどね(笑)。
地域の方々がとても温かく、食べ物も美味しいし治安も良いので、全ての面での「安全度」が高いと思うんです、酒田って。それって暮らしていく上でかなり大切なことです。
「安心安全な暮らし」っていう基盤がある酒田でなら、きっと思い描く移住生活にチャレンジできると思います!!
お獅子とハイ!チーズ!
家族でお弁当を持って公園へ
お寺の裏でタケノコ狩り~!