神奈川県からUターン
栗田 緑さん

おばあちゃん! 酒田に戻って保育士やってるよ!!
横浜で保育士になって10年目。充実した日々を送り、Uターンは全く考えていなかったという栗田さんを突き動かしたものとは?
旅行で訪れた横浜の風景が心に残っていて
生まれは酒田市なんですけど、父の転勤で小学校卒業まで県外で暮らしていました。中学校入学を機に母と姉と私は酒田に定住することになり、バレボール部に入って楽しい学生生活を送っていました。高校時代もバレー部に所属し充実した日々を過ごしていましたが、進学は県外を考えていましたね。「酒田から出たい」というよりは、「神奈川県に住んでみたい!」って気持ちが強かったんです。東京ではなく、神奈川だったんですよね~(笑)。家族旅行で何度か訪れたことがあって、雰囲気や街並みがすごく好きだったからだと思います。それで横浜市の短大に進み、夢だった保育士になるための勉強をしました。子どもが好きだったのと、ずっと転勤族として育ったからか「手に職」というか、どこでも働ける職業が良いなぁって思っていたので保育士になろうと思ったんです。その時の実習でお世話になった法人の保育園から「うちで働かない?」って言っていただいたので、迷わずその園に就職しました。その頃の横浜市は全国的にも待機児童が多い街として有名な時期で、マンション内や線路の高架下にある保育園もありましたが、私が勤めていた園は駅から少し離れた高台にあり園庭も併設されていたので、比較的ゆったりとした保育が出来る恵まれた環境でしたね。
昔から子供が大好き!
夢だった保育士としての日々がスタート
保育士になった最初の年に年長クラスを受け持つことになりました。他の年齢のクラスと違い、イベントも多いですし小学校へと繋がる大切な1年なので、大きなプレッシャーを感じました。その1年間はほとんど記憶がないくらい無我夢中であっという間でした!
ところが・・・、最後の最後に大失態をしてしまったんです。卒園式の直前に私自身がおたふく風邪にかかり42度の高熱が出るほど重症化。顔もパンパンに腫れ3週間も隔離生活となってしまい、式の準備が全くできませんでした。なんとか卒園式前日から復帰できたので、当日は子どもたちの晴れの日に立ち会うことができましたが、少し心残りでしたね。それでも、無事に年長クラスの担任を終えたっていう安堵感はありました。「あ~!!良かった~!」って(笑)。その後も、幼児(3歳以上児)クラスを中心に受け持ち、子どもたちと楽しい毎日を過ごし、同じ園で10年間働きました。子どもたちは年齢によって自我が芽生えてきたり、お友達関係が複雑になったりするので、保育士がどこまで見守って、どこから関わったら良いかというのは難しいんです。一人として同じ子はいないので、何年経っても「慣れ」のない新鮮な気持ちで働ける仕事ですね。
横浜ベイスターズのファンです!
運命的な急展開でUターン
酒田に戻る気は全然なかったんですけど、大好きだった祖母が他界したことが大きなきっかけでした。祖母は保育士として働く私をずっと応援してくれていたんですが、折に触れて「横浜の子じゃなくて、酒田の子どもを育てて欲しい」ってずっと言っていたんです。でも私の生活の基盤は横浜市にあり、楽しい時間を過ごしていたので祖母の気持ちに応えられずにいました。ところが、祖母が亡くなった時に突然後悔する気持ちが押し寄せてきて・・・「酒田で保育士として働いている姿を見せてあげられれば良かったなぁ」って思いました。
その年の夏、新盆で実家にいる時に酒田市広報『私の街・さかた』の、保育士募集の記事が目に飛び込んできたんです。読み進めると応募締め切りが翌日までで、「これはおばあちゃんからのメッセージだ」って思って、高校時代のワイシャツを着て急いで証明写真を撮って応募しました。読むのが一日遅かったら間に合っていなかったと思うと、運命だなぁって思います。一次試験に合格した時点で、横浜の園には退職の意思を伝えました。私を保育士として育ててくれた園を離れる寂しさと、保育士が余っている状況ではなかったので困らせてしまうのではという不安がありましたが、「頑張ってね!」って送り出して頂いて感謝しています。
みんな違って、みんないい!!
酒田の保育士として、ここ八幡保育園に配属となり今年で4年目になります。今、年長クラスを受け持っているんですけど、実はこの子たちが2才の時から持ち上がりでずっと担任をさせてもらってるんです。一人一人に思い出のシーンがたくさんあって、成長を近くで見守らせてもらえて、貴重な経験をさせてもらっているなぁと思います。この子たちの卒園を想像すると胸が熱くなって、元気に園庭を走り回っている姿に涙が溢れちゃうんです! 今からこんな状態じゃ卒園式は大変ですよね(笑)。
年長クラスの今年のテーマは「みんな違って、みんないい」なんです。一人一人のびのび育ちましょうってスタンスで過ごしているんですけど、みんなお互いを分かり合おうとしていて優しいですよ~。走るのが速い子やお絵かきが上手な子など、皆それぞれ得意なことや苦手なことがあるんだよってことを知るために、朝の会でお当番さんにインタビューする時間を作っています。自分の好きなことや嫌いなことを発表したり、「好きな食べ物はなんですか?」など聞き手の子どもたちから質問したりしています。すると子どもたちは、自分と相手の違いに気付いていくんですよね。なので運動会のリレーの時にも、走るのが苦手な子を責めたりしなくなるんです。もちろん負けたら悔しいので「もっと腕も振ると良いよ」って優しくアドバイスをくれて、言われた子も「そっか!やってみる!」って素直に受け入れていて、すごく良い空気になります。食物アレルギーを持つ子も一緒に食べられるマヨネーズで収穫したきゅうりを食べる時があったんですけど、「みんなで一緒のものを食べられるね!」って喜んでくれたり、年齢が上がってアレルギー反応が出なくなった時などは皆で「おめでとう!食べられるようになったんだね!」って声を掛けてくれたりもして。まさに「みんな違って、みんないい」クラスです! そして4年間一緒にいるので、私の性格もちゃんとわかってくれていて、たくさん助けてくれるんです。イベントなどでカメラが必要なときは「先生、ちゃんとバッテリー入れた?」って聞いてくれて、私が「あ!忘れてた~!」ってなるのが日常です(笑)。
音楽やダンスが好きな子も☆
走るのが好きな子も☆
園庭の広さや給食など、横浜との違いが面白いです!
横浜と酒田の園では、まずやっぱり広さが違いますね。私が勤めていた横浜の園は、小さめの複合遊具(多方向から登れる滑り台付き遊具)が1つと鉄棒があるだけの狭い園庭だったんですけど、それでも横浜の中では「園庭がある広い園」っていう評判だったんです。横浜の人がここを見たら広すぎてびっくりするでしょうね~!(笑) 八幡保育園ほどではなくても、酒田市内の保育園や公園は広くてのびのび遊べますよね。そのせいか、酒田の子は遊びがダイナミックだなぁって思います。横浜では、汚れるような遊びに発展するような機会もなかったからか、綺麗なお洋服で登園する子が多かったんですけど、ここの子どもたちは泥んこ遊びで汚れても全然へっちゃらで、ご家庭でも汚れても良い服を持たせてくれるので、私たち保育士も思いっきり遊ばせてあげられます。プール1つとっても、横浜の時は小さいプールで「ピシャ」って感じで遊んでましたけど、ここでは「バシャンバシャン」と大胆な遊びが広がっていきます。園外活動も、横浜では広い公園に行くというだけで、「大イベント」的な扱いだったり、電車に乗ってディズニーランドへ行く園もありました。八幡保育園はというと、地域の方との交流も兼ねた梨狩りや焼き芋、雪が降れば肥料袋を即席のソリにして遊ぶなど・・・全然違います!! あとは、酒田の保育園の給食はすごく豪華だと思います。旬の野菜や果物などみずみずしくて美味しいものがドーンと出てきます。横浜だと1年を通じて手に入りやすい食材が中心ですからね。ここで働き始めてメロンやさくらんぼが出てきてビックリしました!
みんな大好き!美味しい給食
酒田市内で一番広い園庭!
休日はアクティブ派!
休みの日は、新潟や秋田など温泉や美味しいものを求めて遠出をすることが多いです。つい最近は乳頭温泉に行ってきたんですけど、温泉にゆっくり浸かってのんびりするとすごくリフレッシュになるんです。少しまとまった休みが取れると海外へ行ったりもします。今年の夏は台湾に行ってきました! 美味しいものを食べたり非日常の空気を感じたりして良い切り替えになり楽しかったです。昔から旅行が好きで、近場だったら1人でふらっと思い付くままに車で行くこともあるし、横浜にいる友達と現地集合で東京や海外に遊びにいくこともあります。酒田に帰ってきたらあまり色々なところに行けなくなっちゃうかなぁと思っていたんです。でも案外そんなことはなく行きたいところに行けていて、どこにいても自分次第なんだなぁって思いました。
あと、こっちに戻ってきてからは横浜の友人が訪ねてくる機会が増えたので、酒田のオススメスポットを巡って勉強したりもしています。玉簾の滝や山居倉庫、大松家さんのお蕎麦などは必ず喜ばれますね!
韓国旅行にも行きました~
酒田へUターンを考えている方にメッセージ
私のように高校卒業を機に県外を目指す人って多いと思うんですけど、その時に自分が行きたい場所や学びたい学校があるならそれはしょうがないし、夢に向かって頑張ることは大切だと思います。私自身も横浜で過ごした時間は良い経験になっているし、そこでの出会いは人生の財産だと思っています。ただ、ふと「戻ろうかな」って思った時や私のように心を動かされるようなきっかけがあったときには、思い切ってアクションを起こしてみると、思いがけずに道が開けることもあると思います。地元を離れる時に感じていた気持ちとはまた違った目線で酒田の良さを発見できると思いますよ!!
横浜から酒田に遊びに来た友達は必ず「良いところだね~」って言ってくれて、年に2回来てくれる子もいます。自然も豊かで食べ物も美味しいって感動してくれて、産直では大きいバッグいっぱいになるほど野菜や果物を買って帰ります。もう買い占めそうなほど(笑)。
住んでいると当たり前な景色が、実は贅沢なことなんだなぁって再確認できて、酒田に帰って来て良かった~って思います。
横浜から友人が遊びにきてくれました!
八幡保育園で待ってます♪